工事台帳は「あとで作るもの」ではない

― 契約時入力と完工時確定を分ける理由 ―

本記事でいう「工事台帳」は、各現場ごとの原価台帳ではなく、全工事を一覧で管理する“工事情報マスター”を指します。

決算前になると、完成工事高の集計に追われる。

経審の準備で、直前3年の数字を拾い直す。

元請から提出を求められ、慌てて過去データを探す。

こうした状況は、珍しくありません。

しかし問題は、「集計が大変なこと」ではありません。

本当の問題は、入力のタイミングが遅いことです。

目次

多くの会社は「完工後」にまとめる

工事が終わってから、

  • 工事名を記録する
  • 請求金額を入れる
  • 業種を思い出す
  • 技術者を確認する

つまり、後追い管理です。

この方法では、

  • 契約時点での見込売上が見えない
  • 業種別の構成が分からない
  • 受注状況の全体像が把握できない

“管理”ではなく“記録”になります。

契約時点で入力するという考え方

整っている会社は、契約が決まった時点で入力します。

  • 工事番号
  • 工事名
  • 契約金額
  • 元請/下請区分
  • 業種区分
  • 担当技術者

この段階では、まだ売上は確定していません。

しかし、「これから発生する工事情報」はこの時点でほぼ確定しています。

だから、先に入れます。

すると何が変わるでしょうか。

  • 受注残が見える
  • 業種別の受注バランスが見える
  • 元請別の依存度が分かる

これは経営情報です。

完工時に“確定情報”を入れる

工事が完了したら、

  • 請求金額
  • 工事原価
  • 粗利
  • 完工日

を入力します。

ここで重要なのは、契約金額と請求金額を分けていることです。

変更契約や追加工事があれば、枝番を付けて別行で管理する。

これにより、

  • 契約と実績の差異
  • 追加発生の傾向
  • 元請ごとの変更頻度

まで追えるようになります。

なぜ二段階管理が必要なのか

理由は単純です。

建設業は、

  • 受注と売上が一致しない
  • 変更が頻繁に発生する
  • 複数業種が絡む
  • 技術者配置が影響する

という特性を持っているからです。

契約時と完工時を分けないと、後から必ず混乱します。

工事台帳は「申請のため」ではない

決算変更届や経審は、あくまで結果の提出です。

しかし、

  • 業種別集計
  • 元請別粗利
  • 月次粗利推移

がすぐ出せる状態であれば、申請は“作業”になります。

台帳が整っていない会社は、申請のたびに“作り直す”ことになります。

この差は大きいです。

工事台帳はデータベースである

工事台帳は一覧表ではありません。

  • 契約情報
  • 実績情報
  • 利益情報
  • 業種情報
  • 元請情報

が一体化した、会社の履歴です。

そして重要なのは、ファイルそのものではなく、入力ルールです。

いつ入力するのか。
誰が入力するのか。
どの時点で確定させるのか。

ここが決まっていないと、どんなフォーマットでも回りません。

まとめ

工事台帳は「あとでまとめるもの」ではありません。

契約時に登録し、完工時に確定させる。

この二段階設計ができていれば、

  • 経営判断は速くなり
  • 手続きは軽くなり
  • 数字は常に見える状態になります。

整っている会社は、資料を探すところから始めません。

設計管理についてご相談いただけます。

台帳が整わないのは、フォーマットの問題ではありません。

多くの会社が「テンプレートがあれば解決する」と考えます。

しかし実際は、

  • 入力のタイミング
  • 更新ルール
  • 確定の基準
  • 集計の設計

ここが決まっていないと、台帳は回りません。

当事務所では、工事台帳そのものをお渡しするのではなく、

会社の業態に合わせた管理設計を一緒に構築します。

一次下請か、元請中心か。
外注主体か、自社施工か。
利益設計はどうなっているか。

会社ごとに最適解は異なります。

まずは、今の管理状況の整理から始めませんか。

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