この記事でわかること
- 経営事項審査における工事経歴書の位置づけ
- 工事経歴書で調整できる範囲と、調整できない範囲
- 決算変更届の工事経歴書との関係性
- 掲載する工事の選び方の考え方
- 元請工事をどのように扱うべきか
- 作成時に迷いやすい実務上のポイント
経営事項審査の工事経歴書は、単に実績を書き出す書類ではありません。
決算変更届で整理した内容を前提に、評価用の資料として作成するものです。
そのため、経審の時期になってから慌てて準備を始めても、調整できる範囲は限られています。
実際の現場では「何をどう書けばよいのか分からない」「思ったように整えられない」と迷うケースが少なくありません。
この記事では、特に迷いやすいポイントを実務の視点から整理します。
工事経歴書は経審の時点で作り直せる書類ではない
まず最も重要な点は、工事経歴書は経審の段階で自由に作り直せる書類ではないということです。
経審で使用する完成工事高や業種別の内訳は、すでに決算変更届で提出した内容を基礎とします。
そのため、経審の直前になって「この業種を増やしたい」「構成を変えたい」と思っても、実務上は対応が困難です。
特に、審査を受けたい業種を増やしたい場合でも、その業種の完成工事高が決算変更届で整理されていなければ、経審の段階だけで整えることはできません。
経審は過去の実績を評価する制度であり、その場で実績を作ることはできないからです。
掲載する工事は金額の大きい順が原則
工事経歴書に記載する工事は、原則として金額の大きいものから順に選びます。
すべての工事を記載するわけではありません。
一般的には、次のいずれか早い方まで掲載します。
- 金額の大きい順に並べて完成工事高の約70%に達するまで
- 上位10件まで
例えば、大型工事が中心の会社で、上位5件で70%に達する場合は、その5件で問題ありません。
一方、小規模工事が多数ある場合は、10件掲載しても70%に届かないことがありますが、その場合は10件で終了します。
件数ではなく金額割合が基準であり、10件は上限という位置づけです。
元請工事がある場合は積極的に掲載する
可能であれば、元請工事を掲載した方が会社の施工能力を示しやすくなります。
元請工事は、発注者との直接契約や施工管理を自社で行った実績であり、会社の主体性や統括能力の裏付けとして評価されます。
下請工事だけでは分かりにくい部分を補う役割があります。
ただし、元請だからといって小さい工事を無理に優先することは適切ではありません。
基本は金額順であり、金額が近い場合に元請を優先する程度が現実的です。
業種の判断は決算変更届の整理が前提になる
複数の工種が含まれる工事では、どの業種に分類するか迷うことがあります。
大規模修繕などは特に判断が難しく、主たる工種や金額の比重を基に整理することになります。
ただし、この判断も本来は決算変更届の段階で行っておくべきものです。
経審のためだけに改めて分類し直すことは、整合性の面でも作業量の面でも現実的ではありません。
決算変更届で作成した工事経歴書と内容が一致していなければ、差し戻しや再提出につながる可能性もあります。
工事台帳が整っていないと作成自体が難しくなる
工事経歴書には、工事名・金額・工期・発注者・元請下請の別・施工場所など、複数の情報が必要です。
工事台帳が整備されていれば問題ありませんが、実績が分散している場合は確認作業だけでも大きな負担になります。
過去の請求書や契約書を一件ずつ確認して整理することになり、経審の準備期間だけでは対応しきれないこともあります。
この点でも、日常的な管理の重要性がよく分かります。
経審の工事経歴書は「過去の整理の結果」を示す書類
以上をまとめると、経審の工事経歴書はその場で作り込む書類ではなく、これまでの実績整理の結果を示す資料と言えます。
数字や構成を大きく変えることはできませんが、主要工事の選び方や記載の整合性を保つことで、会社の実態を適切に伝えることは可能です。
経審の直前だけで対応しようとすると限界があるため、決算変更届の段階から意識して整理しておくことが重要になります。
まとめ
工事経歴書は経審のためだけに作る書類ではなく、決算変更届から続く実績管理の一部です。
経審の時点で大きく調整することは難しく、日常の整理状況がそのまま反映されます。
「何を書けばよいか」よりも、「これまでどう管理してきたか」が問われる書類と考えると理解しやすいでしょう。
工事経歴書の作成で迷う背景には、制度そのものの理解不足ではなく、日常管理とのつながりが見えにくいことがあります。
必要な資料や整理の方法は会社ごとに異なるため、自社の状況に合わせて確認していくことが大切です。
経営事項審査の準備や許可維持に関する整理についてご不明な点がある場合は、状況を伺ったうえで対応方法をご案内できます。
無理に急ぐ必要はありませんので、気になる段階でご相談ください。
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