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ロープアクセス工事と建設業許可|該当業種と実務経験の証明方法

「ロープアクセスで仕事を受けたいが、建設業許可は何の業種で取ればいいのか分からない」
外壁の塗装や調査、防水補修などをロープアクセスで請け負う会社が増えていますが、いざ建設業許可を取ろうとすると、最初につまずくのがこの「業種」の問題です。
結論から言うと、「ロープアクセス」という名前の許可業種は存在しません。 ロープアクセスは作業を行うための「工法」であって、許可の業種は、ロープで降りて実際に何をするか(塗装か、防水か、調査か)で決まります。
この記事では、ロープアクセス工事に関わる3つの制度を切り分けたうえで、該当する建設業許可の業種と、実務経験で証明する場合の注意点を整理します。
ロープアクセス工法とは
ロープアクセス工法とは、建物の屋上などからロープで作業者を吊り下げ、外壁などの高所作業を行う工法です。「無足場工法」とも呼ばれます。
従来、ビルやマンションの外壁作業では足場を組むのが一般的でしたが、ロープアクセスはその足場を設けずに作業できるのが特徴です。
主なメリットは次の点です。
- 足場の設置・解体が不要なため、工期を短縮できる
- 足場代がかからず、コストを抑えられる
- 部分的な補修など、小規模な工事でも対応しやすい
- 足場を組みにくい狭い場所や特殊な形状の建物にも対応できる
こうした利点から、外壁の塗装・防水・補修・調査などの分野で、ロープアクセスを取り入れる会社が増えています。
ただし、ここで多くの会社が迷うのが「では、ロープアクセスで工事を請けるには、どんな建設業許可がいるのか」という点です。
ロープアクセスには「3つの別々の制度」が関わる
ロープアクセス工事を考えるとき、まず押さえておきたいのが、性質の異なる3つの制度が関わっているという点です。これを混同すると、「何を準備すればいいのか」が分からなくなります。
1. 安全に作業するための教育(労働安全衛生法) ロープを使って高所で作業する人が、安全に作業するために受けておくべき特別教育です。これがないと、そもそも作業者を現場に出せません。
2. 工事を請け負うための許可(建設業法) 500万円以上の工事を請け負うために必要な建設業許可です。業種は作業内容で決まります。この記事の主題です。
3. 技術力を示す民間の技能認定 IRATA・SPRATといった、ロープアクセスの技能を証明する民間認定です。これは上の1・2のどちらの法的要件でもなく、技術力をアピールするためのものです。
この3つは別レイヤーの話です。「特別教育を受けた」ことと「建設業許可を持っている」ことは、まったく別物だと考えてください。
まず前提|ロープ高所作業に必要な特別教育
建設業許可の話に入る前に、安全衛生の前提だけ確認しておきます。
ロープアクセスで高所作業を行うには、労働安全衛生法上、次の特別教育の受講が必要です。
- ロープ高所作業特別教育
- フルハーネス型墜落制止用器具特別教育
これらは雇用形態を問わず、未受講では作業に従事できません。ロープで体を保持し、かつフルハーネスを着用してロープアクセスを行う場合は、両方が必要になるのが一般的です。
ここで重要なのは、これらはあくまで「作業者の安全」に関する義務であって、建設業許可とは別の制度だということです。特別教育を修了していても、それは建設業許可の資格要件(専任技術者の要件など)にはなりません。
なお、フルハーネスの着用が義務となる高さの範囲などの細かい基準は、改正が入ることもあります。具体的な要件は、厚生労働省の資料や最新の労働安全衛生規則でご確認ください(自治体ごとに変わるものではなく、全国共通の国の基準です)。
本題|ロープアクセス工事の建設業許可は「作業内容」で決まる
ここからが本題です。冒頭でお伝えしたとおり、許可の業種は「ロープアクセスかどうか」ではなく、ロープで降りて何の工事をするかで決まります。
ロープアクセスでよく行われる作業を、対応する業種に整理すると次のようになります。
外壁の塗装 → 塗装工事業
ロープアクセスで最も多いのが外壁塗装です。これは工法がロープアクセスであっても、工事の中身は塗装なので、塗装工事業が該当します。
外壁の防水・シーリング → 防水工事業
外壁のシーリング(コーキング)打ち替えや防水補修を行う場合は、防水工事業が該当します。外壁改修ではこの防水と塗装が同じ現場で発生することが多く、後述する「複数業種」の論点につながります。
タイル補修・外壁改修 → タイル・れんが・ブロック工事業 など
タイルの貼り替えや浮き補修などは、タイル・れんが・ブロック工事業が中心です。下地の状態や工法によっては、とび・土工・コンクリート工事業などが関わることもあります。
外壁調査・打診点検のみ → 許可が不要なケースも
ロープアクセスで外壁の調査・打診点検だけを行う場合、それが「建設工事」に当たらないと整理されるケースや、請負金額が小さく軽微な工事の範囲に収まるケースもあります。調査だけを切り出して受注している場合は、そもそも許可が必要かどうかから確認するのが安全です。
このように、同じ「ロープアクセス」でも、作業内容によって取るべき業種は大きく変わります。
1つの案件で複数業種にまたがる場合
実務では、1件のロープアクセス案件で「塗装も防水もタイル補修もやる」というケースが少なくありません。この場合の考え方を整理しておきます。
ポイントは、主たる工事の業種を軸に考えることです。たとえば外壁改修工事として塗装を主体に請け負い、その一部として防水やシーリングが付随する場合、主たる業種で許可を取り、付随する工事は附帯工事として扱える可能性があります。
ただし、どこまでが附帯工事に収まり、どこからは別途その業種の許可が必要になるかは、金額や工事の構成によって判断が分かれます。継続的に複数業種の工事を一定規模で請けるなら、それぞれの業種で許可を取得しておくほうが確実です。自社が普段どんな構成の工事を請けているかを棚卸ししたうえで、必要な業種を見極めるのが第一歩になります。
実務経験で証明する場合の注意点
専任技術者の要件は、該当業種の国家資格があれば満たせます。たとえば外壁塗装をロープアクセスで行う場合、塗装工事業の専任技術者は、1級・2級の建築施工管理技士などの資格を持っていれば問題なくなれます。ロープアクセスという工法は、ここでは関係ありません。
資格を持つ人がいない場合は、実務経験10年で証明する方法があります。このとき注意したいのが、証明の「中身」です。
証明すべきなのは「ロープアクセス作業の経験」ではなく、該当業種(塗装・防水など)の実務経験です。工法がロープアクセスであることは、業種の実務経験の証明においては本質ではありません。塗装工事業なら「塗装工事に従事した経験10年」を証明します。
そのため、実務経験を証明する書類(請負契約書・注文書・請求書など)では、その工事が該当業種の工事であることが読み取れる必要があります。「ロープアクセス工事一式」といった記載だけでは何の業種の経験なのか伝わらず、証明でつまずく原因になります。日頃から、工事の内容(塗装なのか防水なのか)が分かる形で書類を残しておくことが、後の許可取得をスムーズにします。
自社に該当業種の資格者がいるか、実務経験で専任技術者になれるか、簡単な質問に答えるだけで、その場で判定できます。
よくある誤解(FAQ)
Q. IRATA・SPRATの認定を持っていれば、建設業許可も取れますか?
いいえ、別物です。IRATA・SPRATはロープアクセスの技能を示す民間認定で、建設業許可の資格要件(専任技術者の要件)にはなりません。技術力のアピールには有効ですが、許可の取得そのものには直接結びつきません。
Q. 高所作業だから「とび・土工工事業」ではないのですか?
作業内容次第です。「高所だから、とび・土工」と考えがちですが、ロープで降りて塗装をするなら塗装工事業、防水をするなら防水工事業です。高さや工法ではなく、行う工事の中身で業種が決まります。
Q. 調査や点検だけでも、建設業許可は必要ですか?
調査・点検のみの場合、それが建設工事に当たるか、また軽微な工事の範囲に収まるかによって、許可が不要なこともあります。調査だけを切り出して受注しているなら、許可の要否から確認するのが確実です。
Q. 特別教育を受けていれば、専任技術者になれますか?
なれません。ロープ高所作業特別教育・フルハーネス特別教育は作業者の安全に関する教育で、専任技術者の要件(資格または実務経験)とは別の制度です。
まとめ
ロープアクセス工事の建設業許可は、次の順で考えると整理できます。
- ロープで降りて行う工事の中身(塗装・防水・タイルなど)を棚卸しする
- その作業内容に対応する業種を特定する
- 複数業種にまたがる場合は、主たる業種+附帯工事の構成を確認する
- 実務経験で証明するなら、「該当業種の工事」として読み取れる書類を揃える
「ロープアクセス」という工法に引きずられず、実際に行っている工事の中身で業種を判断することが、許可取得の出発点です。
自社の工事がどの業種に当たるか、実務経験で専任技術者になれるかの判断に迷う場合は、お気軽にご相談ください。
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