複数業種が混在する工事は工事経歴書にどう書く?|大規模修繕・改修工事の業種の振り分け方

大規模修繕や外壁改修のように、ひとつの工事の中に複数の専門工事が混在するケースでは、工事経歴書の書き方で迷うことがあります。塗装も防水もタイル補修も行った1件を、塗装の経歴に書くのか、防水の経歴に書くのか、それとも分けて書くのか。判断がつかないまま、毎年なんとなく処理しているという会社も少なくありません。

この記事では、福岡県の手引きをふまえて、複数の業種が混在する工事を工事経歴書のどこに書けばよいか、その考え方を整理します。

目次

まず、工事経歴書は「業種ごと」に作ります

最初に押さえておきたいのが、工事経歴書は業種ごとに作成するという点です。

福岡県の手引きでは、工事経歴書は建設工事の種類ごとに、つまり許可を受けている業種ごとにそれぞれ作成することとされています。塗装工事業と防水工事業の両方の許可があれば、塗装用の経歴書、防水用の経歴書、というように分けて作成します。

また、許可を受けていない業種で工事の実績がある場合は、まとめて「その他」の建設工事として記載します。

つまり工事経歴書は、行った工事をすべてまとめて書く一覧ではなく、業種ごとに分かれた一覧です。ここが、複数業種の工事をどう書くかを考えるときの出発点になります。

迷うのは「1件をどの業種に書くか」です

工事経歴書が業種ごとに分かれているため、複数業種が混在する大規模修繕の1件については、「この工事を、どの業種の経歴書に書くか」を決めることになります。

ここでよくある誤解が、「塗装も防水も行ったから、塗装の経歴にも防水の経歴にも書く」という処理です。これはできません(理由は後ほど説明します)。1件の工事は、原則としてどこか1つの業種の経歴書に書きます。

では、どの業種に書けばよいか。その判断の目安になるのが「主たる業種」という考え方です。

主たる業種の決め方

複数の業種が混在する工事は、その工事の主たる業種(中心になる業種)を判断して、その業種の経歴書に書くのが基本です。主たる業種は、次の3つを合わせて検討します。

ひとつめは、金額の大きさです。その工事の中で最も金額(割合)が大きい工種を中心と考えるのが基本です。たとえば大規模修繕の中で塗装が金額の半分以上を占めていれば、塗装工事業の経歴として書きます。

ふたつめは、工事の目的です。発注者がその工事で最も重視していたものは何かを考えます。

みっつめは、技術的な中心です。工事全体の中で、中心となる専門技術が必要な作業はどれかを見ます。

実際には、金額の大きさを主な目安としながら、目的や技術の中心も合わせて判断するのが現実的です。

どの工事がどの業種に当たるか、という業種の見分け方そのものは、別の記事で詳しく解説しています。

改修工事に必要な建設業許可の業種はどれか

「附帯工事」もあわせて確認しておきましょう

主たる業種を考えるうえで、あわせて知っておきたいのが「附帯工事」という考え方です。

主たる工事を行うために生じた、従たる工事は「附帯工事」とされます。附帯工事は、主たる工事の業種の許可があれば施工できるため、別の業種の許可を取得する必要はありません。

工事経歴書の上では、主たる業種にともなって発生した工事は、その主たる業種の工事の一部として、同じ経歴書にまとめて書くことになります。

ただし、ひとつ注意点があります。その工事を単独で請け負った場合は、附帯工事ではなく、その業種そのものの工事として扱われ、その業種の許可が必要になります。「大規模修繕の一部としての防水」なのか、「防水だけを単独で受けた工事」なのかで、扱いが変わります。

附帯工事と、許可が不要な軽微な工事の範囲は、別の記事で整理しています。

軽微な工事の範囲はどこまで?許可不要の範囲と附帯工事の違いを整理

同じ工事を複数の業種に重ねて書くことはできません

ここは特に注意したい点です。

1件の工事を、複数の業種の経歴書に重ねて書くことはできません。塗装も防水も行った大規模修繕を、塗装の経歴書にも防水の経歴書にも同じ金額で書くことは認められません。

完成工事高は、その業種でどれだけの実績があるかを示す数字で、経営事項審査(経審)の評価にも影響します。同じ金額を複数の業種で重ねて計上すると、実際より大きな完成工事高になってしまうため、認められません。

そのため、複数の業種が混在する1件の工事は、主たる業種を判断して、その業種の実績として1件で書く形になります。「この工事は、どの業種の実績として使うか」を決めておくことが大切です。

どの業種に書くかで、こうした違いが出ます

「どこかに1件書けばよいなら、どの業種でも同じでは」と思われるかもしれませんが、書く業種によって、後から違いが出てきます。

ひとつは、経審の点数です。工事経歴書に書いた業種の完成工事高が、その業種の経営規模(X1点)の評価に反映されます。どの業種に書くかで、業種ごとの完成工事高の内訳が変わります。

もうひとつは、実務経験の証明です。専任技術者を実務経験で証明する場合、その業種の工事を続けてきた実績が必要になります。工事経歴書や契約書で「この工事は何の業種の工事だったか」が分かるようにしておくことが、後で証明する際の土台になります。

経審の点数のしくみは、別の記事で解説しています。

経審の点数はどう決まるのか

経営事項審査の工事経歴書

そのため、ふだんから「塗装がいくら、防水がいくら」と業種の内訳が分かる形で、契約書や請求書、社内の記録を残しておくことをおすすめします。決算変更届の時期になってから1件ずつ振り分けを考えるのは大変ですが、ふだんから業種を意識して記録しておけば、工事経歴書の作成が楽になります。

まとめ

複数の業種が混在する工事の工事経歴書は、次の順番で考えると整理しやすくなります。

  1. 工事経歴書は業種ごとに作る(許可業種以外は「その他」でまとめる)
  2. 複数業種が混在する1件は、分けずに「主たる業種」の経歴書に1件で書く
  3. 主たる業種は、金額の大きさを目安に、工事の目的・技術の中心も合わせて判断する
  4. 主たる工事にともなう工事は、附帯工事として主たる業種にまとめて書く
  5. 同じ工事を複数の業種に重ねて書くことはできない
  6. どの業種に書くかは経審の点数や実務経験の証明に関わるため、ふだんから業種の内訳が分かる記録を残しておく

「大規模修繕」とひとくくりにせず、その工事の中心となる業種を判断して書くことが、正確な工事経歴書づくりの第一歩です。

複数の業種が混在する工事の振り分けや、決算変更届・経審に向けた工事経歴書の作成でお困りの場合は、お気軽にご相談ください。

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