経営事項審査(経審)の準備を進める中で、「社内には技術者がいるはずなのに、なぜか人数として認められない」という状況に直面したことはありませんか?
差し戻しや修正を求められる会社の多くは、「誰を載せてよいか」ではなく「何を証明できるか」でつまずいています。
この記事では、技術職員名簿に載せられる人・載せられない人の条件と、証明に必要な書類を整理してお伝えします。
技術職員名簿とは何か
技術職員名簿は、経審の申請書類のひとつで、**経営事項審査規則(建設業法施行規則第18条の3)**に基づいて作成します。
経審では、技術力を示す評点「Z点」の算出に技術職員の人数が使われます。技術者の数が多ければ多いほど、またその資格が上位であるほど、Z点が高くなります。
ここで重要なのは、技術職員名簿は会社が任意に作る書類ではないということです。証明できる技術者だけが評価対象になります。いくら社内に人がいても、書面で裏付けできなければ「いないもの」として扱われます。
技術職員名簿に載せられる人の基本条件
技術職員として認められるのは、「建設業法第7条第2号イ、ロ若しくはハ、または同法第15条第2号イ若しくはハに該当する資格を持つ者、あるいは登録基幹技能者講習を修了した者であって、審査基準日以前に6か月を超える恒常的な雇用関係があり、かつ雇用期間を特に限定することなく常時雇用されている者」とされています。
簡単にまとめると、次の3つがすべて揃っている必要があります。
- 常勤の社員である(審査基準日以前に6か月超の雇用実績がある)
- 技術職として施工に関与している
- その事実を書面で証明できる
専任技術者である必要はありませんが、「常勤であること」と「証明できること」は絶対条件です。
載せられる人・載せられない人の一覧
| 区分 | 具体例 | 掲載可否 |
|---|---|---|
| 資格保有者 | 施工管理技士、建築士、技術士など | ○ |
| 監理技術者・主任技術者 | 現場配置技術者 | ○ |
| 無資格だが施工管理に従事 | 現場代理人、工程・品質・安全管理担当 | △(証明次第) |
| 外注・一人親方 | 雇用関係がない | × |
| パート・短時間勤務 | 常勤性が確認できない | × |
| 事務職・営業職 | 施工に関与していない | × |
| 他社でも常勤扱いの人 | 二重常勤 | × |
| 経営のみの役員 | 施工管理に従事していない | × |
資格者と無資格者の違い
資格者の場合は、資格証そのものが技術力の証明になります。施工管理技士・建築士・技術士などの国家資格を持っている技術者は、書類の準備が比較的スムーズです。
無資格者の場合は、施工管理に実際に関与していることを別の方法で証明する必要があります。
次のような業務に従事していれば、掲載できる可能性があります。
- 工事の段取り・工程管理を行っている
- 品質・安全管理を担当している
- 協力業者への指示を行っている
- 現場の責任者的な立場にある
ただし、単なる作業員(施工のみ)では認められません。管理業務の実態があることが前提です。
グレーになりやすいケース
小規模な会社では、施工と管理を兼ねている人も多くいます。
- 職長として現場をまとめながら自分も作業している
- 材料手配・工程調整を行いながら職人としても動いている
こうした場合でも、管理業務の実態が証明できれば掲載できる可能性があります。ただし、証明のハードルは上がりますので、事前に確認しておくことをおすすめします。
常勤性の証明に必要な書類
経審では、技術職員の常勤性を厳しく確認します。次のような書類が求められることが多いです。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 健康保険被保険者証の写し | 事業所名が申請会社名であること |
| 雇用保険被保険者証 | 雇用関係の確認 |
| 賃金台帳 | 直近分 |
| 源泉徴収票 | 直近のもの |
外注ではなく、実際に雇用されていることが確認できる書類が必要です。
「人はいるのに足りない」状態になる理由
多くの会社では、次のような問題が積み重なっています。
- 技術者の情報(資格・雇用日・業務内容)を整理していない
- 誰が何を担当しているか社内で曖昧になっている
- 資格証や証明書類を一か所にまとめて保管していない
- 人員変更(入退社)の記録が残っていない
経審の準備段階で初めて問題が表面化しますが、そのときから慌てて対応しようとしても間に合わないことがあります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 審査基準日の直前に入社した社員は載せられますか?
A. 審査基準日以前に6か月を超える雇用実績が必要です。入社から6か月が経過していない場合は、原則として掲載できません。
Q2. 資格を持っているが現場に出ていない社員は載せられますか?
A. 技術職として施工に関与していることが条件です。事務や経営業務のみに従事している場合は、資格があっても掲載できません。
Q3. 一人親方に仕事を頼んでいるが、名簿に載せられますか?
A. 載せられません。技術職員名簿に掲載できるのは、雇用関係がある常勤社員に限られます。一人親方は外注扱いのため対象外です。
Q4. 技術職員名簿と専任技術者名簿は同じですか?
A. 別物です。専任技術者は建設業許可の要件で営業所に配置する技術者、技術職員名簿は経審で技術力(Z点)を評価するための書類です。同一人物が両方に登場することはありますが、制度としては異なります。
Q5. 技術職員が増えると経審の点数はどのくらい上がりますか?
A. 資格の種別・等級によって加点の重みが異なります。1級施工管理技士は6点、2級は2点(監理技術者講習修了者は加算あり)など、資格ごとに点数が決まっています。技術者の人数と資格の組み合わせが、Z点に直接影響します。
まとめ
技術職員名簿は、単に人の名前を書く書類ではありません。
次の3点が揃って初めて評価対象になります。
- 常勤であること(6か月超の雇用実績)
- 技術業務に従事していること
- それを裏付ける書類があること
技術者は会社の最も重要な資産です。経審の準備が近づいてから慌てるのではなく、ふだんから情報を整理して管理しておくことが、Z点を正確に反映させるための第一歩です。
技術職員名簿の作成や経審の準備でお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。
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